≪創業のきっかけ≫
子どもの頃から、何故かツボの位置が自然と分かる子で、最初にその特技に気付いてくれた祖母の肩揉みをしてはお小遣いをもらうことがありました。このような経験が重なり、人を癒すことに興味を持つようになりました。
臨床心理学を9年間学び、カウンセリングの現場に立つ中で、「回復に時間がかかり過ぎる」という課題に直面していました。クライアントの変化は少しずつ見えてくるものの、自分自身が「回復させることができている」という実感を持てず、臨床家としての手応えに欠ける日々が続いていました。
そんな中、出産を機に実家のある千葉県市原市に戻ったことで、転機が訪れます。そこで偶然出会った一人の施術家が、長年抱えていた課題に対する答えを持っているように感じました。その方の施術を受けたとき、心と体が同時に整っていく感覚を初めて体験し、「これだ」と直感したのです。
1年後にはその方を師匠として仰ぎ、本格的に施術を学び始めました。最初に教わったのは、自律神経系に作用する施術でした。実際にその技術を用いてみると、施術を受けた方の呼吸が深くなり、心拍が安定し、脱力して眠りに落ちていく様子を目の当たりにしました。その瞬間、「この施術は確かにカウンセリングに有効である」と確信したのです。 心のケアと身体へのアプローチが融合することで、より深い癒しが生まれる——その可能性を信じ、もっと多くの人にこの施術を届けたいという思いが強くなりました。そして、独立を決意。心理学の知見と、身体に触れることで得られる安心感を組み合わせた、新しい形の心理療法を目指して歩み始めました。

≪安寿堂とは≫
千葉県市原市にある村上農家組合の寄合所を、市原市未来開拓サポート事業補助金を活用して改修しました。この建物は、私の高祖父が当時の農家組合員に土地を譲渡したという記録が残っており、その歴史に触れたとき、深いご縁を感じました。
寄合所は、長年にわたり地域の公民館的な役割を果たしてきました。子どもたちのラジオ体操や農家組合の総会など、地域の人々が集う場として親しまれてきた場所です。畳24枚分の広さがあり、遠方から訪れた方々からは「おばあちゃんの家に帰ってきたみたいで懐かしい!」という温かい声をいただいています。その言葉に、この場所が持つ安心感と記憶の力を改めて感じています。
今回の改修では、施術環境の充実も図りました。補助金を活用して、超短波による温熱療法が可能な機器を導入。この機器は、数十分の使用で副交感神経を高める効果があり、施術との相乗効果を生み出しています。心身の緊張をほぐし、深いリラックス状態へと導くことで、より質の高い癒しを提供できるようになりました。

≪市原市産業支援センターの活用≫
創業準備を進めていた頃、偶然、市原市産業支援センターを利用していた方と出会ったことがきっかけで、すぐに相談の予約を取りました。初めてセンターを訪れたのは、開業前の2023年秋頃だったと思います。
その際には、コーディネーターである中村中小企業診断士と、マーケティング専門家の長部さんに事業の構想を聞いていただきました。「誰に」「何を」「どのように」という視点から事業を整理する方法や、広報の手段、外部との連携の可能性など、自分一人では思いつかなかった具体的な助言をいただき、大きな気づきを得ることができました。
また、宍倉センター長も同席してくださり、「公民館的な場所で開業するのは珍しいが、精神科へ行くよりも敷居が低く、通いやすいのではないか」という言葉をかけていただきました。普通の店舗ではないことに少し引け目を感じていた私にとって、その言葉は大きな励みとなり、自信へとつながりました。
2024年3月には、同センター主催のビジネスオーディションに参加し、「眠り」をテーマにプレゼンテーションを行いました。その際に知り合った経営者仲間とは現在も交流があり、チラシの作成や予約サイトの改善など、事業面での協力を得ています。
その後も何度も支援センターに足を運び、ホームページやチラシにどのような表現を用いればクライアントに分かりやすく伝わるかなど、実践的なアドバイスを受けながら準備を進め、2024年5月に「安寿堂」をオープンすることができました。特に長部さんから教わった「とにかく発信して突き抜ける」という姿勢は、この時期に培われた大切な精神です。 開業後も、ホームページの不具合に関する相談や事業の近況報告などで、継続的に支援センターを活用しています。初めて相談に訪れる際は、緊張したり、何を話せばいいのか迷ったりされる方も多いかもしれませんが、リラックスして足を運んでみると、きっと親身になって話を聞いてくださり、的確なアドバイスが得られると思います。

≪現在とこれから≫
早いもので開業してから1年が経過しました。定期的に訪れて下さるクライアントの方々が増えたおかげで、数か月先までご予約を頂いていることに感謝の気持ちを持っているのと同時に、これだけ悩んでいる方がいらっしゃるのだなと、より一層に身を引き締めてクライアントの方々と向き合っていきたいという気持ちを強く感じています。
自分がやりたい施術のまだ10%もできていないと強く感じているので、超一流の施術家になるために日々邁進致します。
代表 並木 靖美 学習院大学、大正大学で臨床心理学を9年専攻。 公認心理師と臨床心理士の資格を有しており、勤務時代には障がいを持った方々のメンタルヘルスケアに関わる業務に従事。 整体を学び、カウンセリングと併せた心と体の双方からアプローチする心理整体の施術を提供する「安寿堂」を2024年5月にスタート。 現在、施術を通じて多くの方に心身を回復させるケアを行っている。 インスタグラム: https://www.instagram.com/jasminen.4/?hl=ja |