経営理念は「創造的な材料により、豊かな社会の実現に貢献します」

日本データマテリアル株式会社は、ニホンハンダ株式会社と日本ベルパーツ株式会社が相互の技術を結集する形で1983年に創立しました。当初はステンレス鋼に溶融はんだ のメッキ加工を行っていました。その後、市場ニーズの変化に伴い、 はんだ の成形加工 、化成品製造など行うとともに、 はんだ に関する新しい製造加工技術を取入れながら成長してきた会社です。はんだというとほとんどの方が線はんだをコテで熱して使うことをイメージすると思います。近年、技術革新が進み、電子機器などの小型化が進行した関係で、いかに細かい部分にはんだ付けをできるか、という技術が必要になりました。弊社はそういった技術の進歩に乗り遅れることなく、常に最新のはんだ加工技術を追求しています。
弊社の経営理念は「創造的な材料により、豊かな社会の実現に貢献します。」というもの。私たちの仕事はさまざまな電子機器や機械の部品同士を接合するというものですから、いわば縁の下の力持ち的な存在です。それはつまり、この仕事に関わっている人たちが、日々の生活にどうかかわっているか見えづらいというジレンマを抱えてもいるのです。だからこそ、自分たちの仕事と社会との関わりを意識させ、従業員に自分の仕事に誇りを持たせることが重要だと考えました。今回「市原で大切にしたい会社表彰」の大賞をいただいたのも、そういった理念の浸透を目指した経緯を認められたものだと考えています。

本人も家族も、実はすごい仕事をしているという実感

私が社長に就任したのが2014年。父が創立者で叔父が2代目、私が3代目ということになります。父も叔父も現場で仕事をしてきたこともあり、現場を引っ張るリーダーシップを発揮していました。しかし私は前職でSEの仕事に従事しており、製造業についてもはんだの技術に関しても素人でした。そのため、父や叔父とはまったく異なるリーダー像を描く必要がありました。
そこで経営理念をつくり、それを浸透させることに取組みました。私が経営理念に込めた思いは、社員だけではなく社員の家族全員に「この会社に入ってよかった」と思ってもらいたい、そうすることで家族の尊敬を得られる存在になってもらいたい、ということです。それが働きがいにつながります。そのためには、本人も家族も実はすごいことをしていることを自覚してもらう必要があります。自分たちの技術が社会のどういった場所で使われているのか、たとえば日常で使用するパソコンやスマートフォン、新幹線の中の部品の接合、電気自動車などにも使われていることを、時間をかけて社員に説明していくことから始めました。仕事にプライドを持つことができれば仕事に対する姿勢も変わってきます。つまり自分で考えて動くことができる組織を目指しました。
もちろん、それまで指示をもらって仕事をしていたわけですから、少なからず波紋が起きました。考えたことがないから、どう考えたらいいのか分からない、どう動いていいのか分からない……。そのため最初は去っていった社員もいました。しかし少しずつ賛同してくれる社員が増え、それにつれて着実に組織としての力も向上してきたように感じています。最近では、管理職クラスに理念が浸透していることを感じているので、着実にいい方向に向かっていると考えています。

審査のプロセスで初心に返ることができたのが有意義な経験

弊社は船橋市で創立し、1987年に市原市姉崎に移転しました。当時は地元との接点がほとんどなかったのですが、商工会議所や市役所を通して少しずつ地元との交流が増えてきました。商工会議所の青年経済人交流会に参加し、若手経営者とのつながりもでき、工場の改築なども地元企業にお願いすることができました。
市原市はコンビナートが連なる関係で、地元の人と地元以外の人がミックスされた文化を形作っています。工場地帯があり、養老渓谷があり、里山があり、とても豊かな土地だと分かり、とても好きになりました。
今回、「市原で大切にしたい会社表彰」大賞をいただき、今まで行ってきたことが外部から認められ大きな自信になりました。また、審査プロセスの中で審査員からインタビューを受けるのですが、その際に自分たちがやってきたことを棚卸し、整理することができ、初心に返ることもできました。この賞に応募するだけでも、大きな効果がありましたので、機会がありましたら多くの企業の方にチャレンジしていただきたいと思います。