創業は臨海部の埋め立て、企業誘致と深く関係。地域と共に成長してきた企業です
川岸運送株式会社は、創業62年になります。私の祖父が、市原市にコンビナートが誘致された際に地元の漁業者と折衝を行い、その後、丸善石油株式会社(現コスモエネルギーホールディングス株式会社)の依頼を受け1963年8月に設立しました。以来、石油等のエネルギー資源の運輸を主たる事業としています。他にも、アスファルト配送やアドブルー配送、最近ではコインランドリーも開業しました。
祖父から父へと受け継がれ、特に父から会社を継ぐように言われたことはありませんでしたが、私で3代目となります。地域の方からの「川岸さんの息子さんだ」という視線や期待もあり、20代半ばで勤めていた会社を辞めてこちらの会社に入社しました。
入社した当初は、社員の方々と会社の関係性も決して良くはなく、お客様からの評判も落ち込んでいたように感じました。そのため、早急に対応窓口を作り、運行管理や教育など内部の管理を進め、組織化を目指しました。私がまだ24歳の頃です。社員を信頼し任せるということを知らず、24時間365日、気の抜けない日々が続きました。そうしているうちに、一人で抱え込み過ぎたためか体調を崩し、半年ほど休養を必要としました。
復帰後は「一人では限界がある」と心底感じたため、社員皆さんを頼るようになりました。自身の不在時に会社が順調に回っていたことも、社員への信頼につながりました。局所的・部分的な仕事の振り方をしていたことを反省し、自分は方向づけとバックアップに回り、社員自らの意志や「やりたい」という気持ちを尊重するようになりました。すると、不思議とうまくいくようになり、業績も上がっていったと思います。
社員一人一人を大切に。話しやすいように、聞きやすいように、働きやすいように。
入社当時は疑問に感じていましたが、先代、先々代から変わらず、社内にはコミュニケーションを取りやすい、温かい空気がありました。仕事のあとも事務所内や喫煙スペースに残り、2時間も話し込んでいる……など、今どき珍しいのではないでしょうか。そういった光景が見られます。もちろん20代30代の若手は、そういう世代だからでしょうか、早く帰る社員が多いのですが、遠慮なく会話に参加して欲しいとは常々思っています。
運送業は今、人が集まる会社じゃないと生き残っていけないと言われています。法令を遵守し、しっかりと管理ができる会社でないと人が集まりません。逆に言えば、法令を適正に守れば人が集まり、集まればより良い環境で仕事ができるということです。
2024年4月からは働き方改革関連法が施行され、運送を担うドライバーの時間外労働に上限が設けられました。このことは、「物流の2024年問題」と言われ、業界でも問題視されていました。一日に運ぶことができる荷物の量が減り、事業者の売り上げや利益が減少、そのことでドライバーの収入も減ってしまい、担い手不足に……という懸念がありました。
しかしながら、弊社はこの法令を守るために2、3年前から動き出しており、就業規則を変えたり給与の支給基準を見直したりと企業体系を整えてきました。結果、スムーズに事が運び、2025年を迎えた今も、諸問題はありますが、お客様、社員の皆さんの協力によって業務に取り組めています。
聞くところによると、この地域ではドライバーの同業者間で交流があり、情報交換などをしているそうです。光栄なことにその中で弊社の評判は良いそうです。また、定年は60歳ですが、現在も73歳、75歳のドライバーを引退した社員が、現場で培ってきた経験を生かして管理事務を行っています。定年後の再雇用は、既にしっかりと企業風土として根付いています。
人材を確保できれば物量のある地域なので、いろいろな事にチャレンジを行っていけば生き残っていけると思っています。
受賞したことで、より一層身を引き締めていく
この度、「市原で大切にしたい会社」表彰を受けて、私の意識は完全に変わりました。この受賞を大切にしたいという誇らしい気持ちと、より一層気を引き締めて業務に当たりたいという気持ちが強く出てきました。社員のみなさんにもこの受賞を伝えたのですが、「社長が表彰されたっていうことは、何か悪いことが起きるんじゃないか」なんてふざけて言うんです。でも、そんな言葉の裏返しには、社員も皆嬉しく、誇らしい気持ちがあるのだと思います。この冗談の言い合える社長と社員の関係性を大切に、今後も創業100年を目指して、運ぶものが変化したり、時代も変わりますが、波に乗って共に変わっていきたいと思います。
会社概要
【基本データ】
会社名:川岸運送株式会社
住所:千葉県市原市五井5886-1
TEL:0436-22-3511